春の三連休。
ようやく暖かくなって、行楽のタイミングを待っていた人々が一挙に吐き出されたように、京都はえらい人混みだった。四条通は、あふれんばかりの人。ちょうどこの時期、清水寺から青蓮院の方までライトアップされる「花灯路」が開催中。高台寺前のねねの道は、日が沈むにつれてたくさんの人で埋まった。
しかも観光客には大学生らしき男女や、20代のカップルなど、やたら若い人が目立っていた。思い返して自分が学生の頃、連休や週末に神社仏閣を見て回ろうという発想があっただろうか。彼らの様子を見ていても、若い人達みんながみんな、こうした京都の歴史や文化に興味を持って観光しているとは思えない。「花灯路」というイベント的なノリや、ロマンティック・プレイスとしての関心があるんだろうなという気がする。
ということで、連休2日目は人混みを避けて花背へ____。
左京区の山奥、花背には有名なお蕎麦屋さんがあり、こういう機会でもないと行けないのでAちゃんの車で向かった。10年以上前に来て以来、訪れたことのなかった花背。鞍馬よりさらに奥にある山里は、思いのほか遠かった。しかも道が細く、鞍馬を超えて花背に向かう道はさらに険しく、人家などひとつもない杉の生い立つ山道を進んでいかなければいけない。細い道の上、カーブしているので、運転するAちゃんも大変そうだ。
「こんな道のりを経てまで、わざわざ蕎麦食べに行く必要性あるんやろか」
蕎麦食べる、という以外にさしたる目的もなかった私達は、だんだんそんなキモチになってきた。幸いお天気が良かったので、たまにはこんなドライブもいいかって感じで杉林の中を抜けて行くと、ようやく前方に小さな集落が現れた。日本昔話に出てくるような山間に、民家がポツポツ建っている。
その集落へ入ってすぐのところにある茅葺き屋根の民家が、花背そば「花竹庵」。
既に2時を回っていたが、駐車場はほぼ満員。品川ナンバーや神戸ナンバーなど、ちょっと通な観光地として知られているのか、京都以外の人達から人気があるようだ。趣ある民家は、内部も昔の造りそのままが活かされていて、黒光りする板の間や天井の高い座敷がいくつかつながっていて、囲炉裏もしつらえられていた。
店内は満杯だったが、ちょうど入れ替わりで席につくことができた。
メニューはそんなにない。Aちゃんは山椒を効かせた大根おろしをぶっかけていただく「花背そば」を、私は錦糸卵と椎茸をのせてゴマだれでいただく「ごま」をオーダーした。満員の上、蕎麦を茹でる時間もあるので、オーダー後結構待たなければならない。しかも結構なお値段だ(いずれも1680円)。
蕎麦が出てくるまでの持ち時間に、ぬか漬けのお漬け物、おちょこに一杯の日本酒(これが美味しかった!)、ちょこっとの蕎麦の実の雑炊が出てくる。私はこういう民家の雰囲気も好きだし、美味しい日本酒も味わえたので(Aちゃんの分まで)、結構ハッピーだった。
一方野を越え、山を越えわざわざやってきて、しかも待たされた上に高い値段で、さして合掌造りの民家などにも興味がなさそうなAちゃんはそれほど楽しそうでもない。場持ちもしないので、蕎麦が来るまでの間に、民家の外にあるトイレに行った。
用を済ませて玄関へ戻ってくると、背後で「ごめんくださ〜い」と若いカップルらしき男女が入って来た。私は別に関心もなかったので、顔も見ずそのまま靴を脱いで席に戻って来た。Aちゃんとたわいもない話をしていると、先ほどのカップルが席が空くまで囲炉裏端に姿を現した。私の座っているところからは女の子の姿が見えた。何気なく彼女に目をやって、私ははっとした!あの顔はまさしく、
吉川ひなのちゃんじゃない!?
しかし次の瞬間、その女の子が顔を上げると別人だとわかった。「な〜んだ」と思ったけど、ひなのちゃんに違わず可愛らしい顔立ち。その後立ち上がってこちらの部屋へ歩いて来る姿を見て、彼女は絶対モデルか芸能人だと思った。あまりにも顔が小さくてスラ〜ッと背が高い抜群のプロポーションをしている。
知る人ぞ知る「花竹庵」だし、モデルや芸能人が訪れてもおかしくない。するとそのカップルが私達の後方のテーブル席に座った。ちょうど私の座っているところからは彼女らがよく見える。座ったとたん、男の子の方と目があった。
・・・・・・
今度こそ、私の目は芸能人を捉えた。
芸能人に関心の少ない私ではあるが、なぜかその人物が誰だか識別できてしまった。若いカップルの男のコの方は松田龍平クンだった。私の見た感想は、なんかごくフツ〜の男の子という感じ。それぐらいさり気ない普通のカップルだった。
これは芸能人大好きなAちゃん(今はハリウッド俳優の故ヒース・レジャーに発情中だが)にとっては、かなりうれしい出来事のはず。東京では芸能人に出会うことなど日常茶飯事だろうが、京都も結構芸能人と遭遇する。でもこんな山奥で、しかもこんな至近距離で会うって、私はさしたる感慨もないが、芸能人好きのAちゃんにとっては結構エキサイティングであろう。私はAちゃんの友人Sさんの話を思い出す。
「今、隣にホテイがいるんです〜〜〜
」
そう言って声をひそめながらも彼女は興奮してAちゃんに電話をしてきたという。ホテルのレストランで食事をしていると、隣にホテイ夫妻がやってきたという。確かに有名人が隣にいたりすると少しはハナシのネタにはするが、その場で誰かに電話してライブ中継するという発想はない。
松田龍平クンの名前が出てこない私は、声をひそめて「後ろに松田優作の息子がいる!」とAちゃんに伝えた。けげんな顔をして冷静に「どっち?」と返すAちゃん。弟を知らない私は「お兄ちゃんの方、絶対!」と念を押したものの、何気なく後ろを振り返るAちゃんは目が悪いので確認できない。おまけに彼は携帯ゲームに夢中なのか、なかなか顔を上げない。
忙しい芸能人が、金土日に京都なんかにいてるか〜?
声を出して会話するのもはばかられるので、メール画面を私に見せてくるAちゃん。あくまで芸能人ベタな私の目に疑惑のシセイを崩さない。席に着いてからはほとんど会話をしていなかった彼らだが、しばらくすると松田龍平君が顔を上げ彼女と会話し始めた。
そうやわ〜
声で判別できるとは、さすが芸能通。するとにわかに興奮を隠しきれないAちゃん。といって食事を楽しんでるところへ声をかけたり、写真を撮ってもらうのも不躾だし、チラチラ背後を振り返ったり、途中お店の人が2人のテーブルへ来て松田クンカップルと話しているのを小耳にはさむのがせいぜい。
とうとう蕎麦を食べ終わり、お会計を済ませて私達は店の外へ出た。
かつてフランスでトシちゃんと遭遇し(ふる〜
)、ツーショット写真を撮ってもらった経験があるAちゃんは、当然のようにここで出待ち体勢。しばらく店の外で彼らが出て来るのを待っていたが、一向に出てくる気配もないので結局あきらめた。駐車場には彼らが乗ってきたであろうと思われる車もないので、きっとお迎えが来るまでしばらくいるに違いないと思ったのだ。
かくして「記念写真」は実現しなかったが、帰りの山道、Aちゃんは上機嫌だった。古民家の風情も、美味しいお蕎麦の味わいもほとんど楽しむことはなかったが、芸能人登場で“わざわざ花背まで来た甲斐”ができたというわけだ。
早く明日会社に行って、誰かに言いた〜い
ちなみに忙しい芸能人が連休に京都に現れた理由は、「剣岳」という新しい映画のキャンペーンのようだったらしい。帰ってくると、早速Aちゃんは携帯でググッて周辺情報を調べ上げ始めた。なんと一緒にいた奥さんは日露ハーフのモデルで、弱冠21歳らしい!可愛かったも〜ん
果たして花背には何をしにいったのか、私としてはちょっと疑問が残らないでもないが、予想外の花背ドライブだった。これから花背を思い出す度、のどかな山里でもなく、打ち立ての蕎麦でもなく、松田龍平クンの顔が浮かんで来るに違いない。
に、しても、ああも芸能人一人で活気づいたり、憧れスターに目が♡になれるAちゃんのような人って、ある意味羨ましい気もする。スターという存在が、人をときめかせ、人生に輝きを与えくれる。効く人には効く、ココロのカンフル剤となっている。
しかしヒース・レジャーという、遥か外国の俳優で、しかももう亡くなった人に本気で恋をし、携帯に取り込んだ写真にうっとりしているAちゃんの姿は、悪いけど私にはやっぱり理解できない(笑)
でもま、目が♡になっているAちゃん、ハッピーで何よりです



花背「花竹庵」の店構え
酸味の効いたごまだれが美味しかった。
食前酒の「八坂鶴」がお気に入り!
帰り道で立ち寄った「円通寺」は残念ながら本日終了。
最近のコメント