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瞳の奥の秘密

サスペンス映画が大好きな私。

しかし近頃ではなかなか満足できるものに出会えることは少ない。大がかりなアクションに走りすぎたり、ややこしいトリックであったり・・・ドキドキしながらも心動かされるサスペンス映画というのは近年では「ミスティックリバー」が最後だろうか。そんな私が久々に満足できたのが、「瞳の奥の秘密」である。

アルゼンチン映画で、昨年「おくりびと」が受賞したアカデミーの外国語映画賞をとった作品だ。アルゼンチン映画といえば「ブエノスアイレス」ぐらいしか記憶にないが、あれも中華スターだったし、ピュアなアルゼンチン映画はこれが初めてかもしれない。それだけ文化や社会には馴染みがなく、映画を観て人々の生きる姿や社会背景などを垣間見ることができる。

ストーリーの軸となるのは、刑事裁判所を定年退職したベンハミンが25年前に担当した未解決のレイプ殺人事件。醜悪でさまざまな謎を含み、忘れようとも忘れられない、ベンハミンにとっても人生の岐路となった殺人事件。それを小説にすることを決心したベンハミンが元の職場を訪れ、元上司でありかつていい仲に発展しそうだった検事補のイレーネと再会するところから始まる。過去と現在を巧みに往き来して事件の真相に迫るにつれ、さまざまな人間模様も浮き彫りにされていく。

一言で言うと、大雑把な展開と繊細な心の機微のつつがない二重奏というところだろうか。例えば25年前に事件を追っていたベンハミンと同僚のパブロが犯人に行き着く過程はかなり強引である。けれどもそれが気にならないのは、そんな細かいことよりも、辿り着くべきストーリーに意味があるし、他に大切なメッセージがいろいろと散りばめられているからだ。どーでもいいところは強引に引っ張り、大切なところにはちゃんと心配る采配が私には心地良かった。

映画の中では「変わる」ことと「変わらない」ことがしばしば対比される。

例えばレイプ殺人を起こしたゴメスという青年は、行方をくらまし続け捜索は難航していた。職を変え、住所を変え、宗教を変えて逃げ延びる犯人。それでも変えられないものがある。それは情熱だ!という発想に辿り着いたベンハミンとパブロは、サッカーの熱狂的ファンであるゴメスをなんとサッカー場で捕らえる。

美しい妻をレイプ殺人によって殺された銀行員の夫モラレス。妻への愛情は歳月を経ても変わることなく、時代が変わり、歳をとって風貌が変わってしまっても、犯人に対する憎悪はやはり25年経っても変わることはなかった。

そしてベンハミンとイレーネも、25年という歳月の間それぞれの人生を送ってきたが、互いに封印していた「気持ち」だけは変わらなかった。月日を経ても、何があっても、変えられないから真実なのだろう。あの時、あのシーンで、瞳の奥だけが真実を語っていたのかもしれない。

罪と罰という重いテーマをベースにしたサスペンスに大人のロマンスが秘められた、まさに上質な味わい。主人公のベンハミンはじめキャストもとても魅力的で、特に私は凛として力強いイレーネ役の女優さんにオーラを感じた。タンゴのように情感に溢れていながら所々にユーモアも効いていて、アルゼンチン映画の奥深さを初めて体験できた気がする。

アクションやトリッキーな仕掛けがなくとも、こんなにも重厚で心動かされるサスペンスに出会えたなんて、わざわざ大阪まで観に行った甲斐がありました・・・!

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「瞳の奥の秘密」★★★★ リカルド・ダリン、ソレダー・ビリャメル、パブロ・ラゴ、ハビエル・コディノ 出演 フアン・ホセ・カンパネラ 監督、129分 、2010年8月14日公開、2009,スペイン、アルゼンチン,ロングライド (原題:EL SECRETO DE SUS OJOS )                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「主人公ベンハミン(リカルド・ダリン)は、 忘れがたいある事件を題材... [続きを読む]

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