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昼下がりの客

家で仕事をしていると、ピンポーンと鳴った。

「はい」とインターホン越しに返事すると、近所のおばさんだった。「少し、いいかしら?」と言われて玄関の外へ出ると、門扉を開けてずかずかと入ってきた。日傘をたたみながら「ちょっとおしゃれべりさせてもらおうと思って・・・」

別に全然親しくもない間柄なのだが、以前おばさんがうつ病を患っていて、その時にどこかで調べた京都市内の心療内科を教えてあげたことがあった。私も軽いうつになったことがあるし、うつ病になった友人もいたので、普通の人よりは理解があったと思う。道で会う度に様子が様変わりしていくので、何かできることがあればと病院を調べたのだ。

60歳を過ぎたおばさんは、数年前に裁判官だった旦那さんを介護の果てに亡くし、介護のあたりからうつ病を患い始めたそうだ。その後旦那さんを亡くして一辺におかしくなり、一度見かけた時には、店に行ったら万引きしそうで怖いといきなり泣きつかれたこともある。

裏の通りに住んでる人だし、日ごろ近所づきあいがあるわけではなかったが、唯一私もそのおばさんも犬を飼っていたことで、話をする機会があっただけ。なのに道で会ったらものすごくしゃべりかけてきて、私も面食らってしまうのだが、きっと友達がいないんだろうな~と思う。

きちんと主婦業をし、子育てをし、きっと遊ぶことも、友達をつくることもせず、家庭の中でだけ生きてきた人なのだろう。家族を送り出したとたん、とてつもない不安と孤独感に苛まれて、毎日生きていくことが辛く、死ぬことばかり考えてたこともあったそうだ。

でも立派な家もあるし、お金も、時間もある。

世間的にもうらやましい境遇だと思う。早くから1人暮らしをし、仕事を持ち、不真面目に生きてきた分友達もたくさんいる自分からしたら、そんな境遇が不幸にはとても思えない。でも生真面目に家庭だけで生きてきた人が60を過ぎてぽ~んと1人にされたら、それはとてつもない淋しさなのだろう・・・。ウチの母などおばさんよりずっと歳とってるが、夫を亡くしてうつになるような要素は微塵もなく、生き生きと1人暮らしをエンジョイしている。

この差はなんなのか・・・!?

やっぱり基本的なところで自分の意志で生きてるかどうかの違いではないか。子育てや旦那の世話だけに明け暮れるだけの生活はイヤ!と言って自分で仕事を持ったり、他に楽しいことに目を向けるのが私や母としたら、そのおばさんはただひたすら家族と家庭に向き合い、そこで守られて生きてきたのだと思う。もともと生真面目で几帳面、人付き合いも下手な人のようだから、余計1人になってしんどいのだろう。わがままも困るが、自分の意志を持たない生き方も、とても危険だなと思う・・・。

それと鷹揚さ。

若い時でも言えるが、自分にはこの世界しかないとか、この生き方しかないとかそういうきめつけが自分と自分の可能性を縛ってしまうと思う。鷹揚さがないと、失敗した時、何か挫折した時、自分をリセットするのに時間がかかる。自分が追い求めている姿や理想に固執過ぎるから。おばさんも、過去の楽しかった思い出ばかりにしがみついている。時代は常に変化し、人生は山もあり谷もあるのだから、人間もしなやかに沿っていくのがそれが一番自然な生き方なのだと思う。

よく孫の話ばかりする年寄りがいるが、あれも私にはあまり好感が持てない。子供にお菓子やおもちゃを買ってやったりすることを生きがいにするくらいなら、そのお金で海外旅行へ行ったり、趣味や社会活動に勤しんで自分の輝いた姿を見せてやる方がよっぽど孫のためになると思う。いくつになっても自分の境遇を受け入れて、自分の意志で生きてる人はカッコいい。

「あの時もらった手紙今でも大切に持ってるのよ」

おばさんはそういっていた。自分ではまったく覚えていないが、心療内科の病院を紹介した紙に、私は何か一筆励ましの言葉を書いて渡したのだという。

それをどうも友情の証と思われているようで、帰り際に「またおしゃべりにこさせてね、今度は何か持ってこないと。何が好き?甘いもの?お酒?」と聞いてこられた。

いろんな意味でも、とにかく早く元気になられることを私は願っている・・・・。

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